TEA FOR ONE TOP

第二回・・・スワンミュージック社長James相馬氏とダブル・Wネック対談?!

    

ミー・ペイジといえば、レスポールと並び、チェリーレッドのWネックギターを高々と掲げた雄姿をイメージする方も多いはず!ペイジに影響されてギターを始めた誰しもが、このギブソンSG−Wネック(正式名:ギブソンEDS-1275)には憧れたのではないでしょうか。ジミー・ペイジ・シグネイチャーモデルのレスポール(2004年発表)をはじめ、2006年にはついにジミー・ペイジ・シグネチャーWネックが発売されるとの話題が浮上。彼の存在が昨今のヴィンテージ/高級ギターブームに一役買っている のは言うまでもありませんが、特にペイジ・ファンには思い入れの強いWネックギターについて、JimmySAKURAIと、ギター友達でありスワンミュージック社長のJames相馬氏が、それぞれの愛器を手にWネック研究ポイントを語り合いました。ギタリストの方はもちろん、あまりギターには詳しくない...という方も、ジミー・ペイジを追求する2人のギタリストのギター談義を、お楽しみいただけるとうれしいです!
(ギター専門用語が多数出てきますが、すべてに注釈がつけられませんこと、何卒ご容赦下さいませ)






>> 第1回・・・
 TEA FOR ONEマスター河野氏と

 

(J=JimmySAKURAI /S=相馬)

J : ぼくも一通りのギターは持ってるけど、相馬さんのペイジ・ギターのコレクションは充実してますよね!僕らが友達になったきっかけも、相馬さんが日本に数本しか入ってないPERFORMERギター(※1)のことで、お話しする機会があったのがきっかけでしたものね。僕も、何人かペイジ関連のギターを集めている人を知ってるけど、あれまで持っている人、しかもあれを弾いてライヴを演ろうという人には、初めて会った(笑)。

S : (笑)いやー、ZEPPELINはサクライさんにとてもかなわないから、僕は自分の体形を冷静に判断した結果、ペイジ・プラントでいこうと (笑)。

J : でも、とにかくコレクションの中では、やっぱりこのWネックですよね。なんと、滅多に出てこない本物のギブソン・ヴィンテージのSG-Wネック!

S: そうなんです!ペイジの使用モデルとは微妙に違うんですが。詳しくはあとでまたお話ししますけど、68年〜69年のあたりに作られたものらしいです。ところで、サクライさんのWネックって、ギブソンのリイシュー(復刻モデル)じゃないんですよね。ヘッドには"Gibson"って入ってますけど?

J : そう、正確にいうと、これはね、たしか93年製ギブソンのリイシュー・モデルを中古で買ってきて、ヘッドプレートとフィンガーボード、あとはアッセンブリーのごく一部を転用して、『ギブソンのモディファイ・モデル』としてフリーダム(※2)という工房で作ってもらった。ここは、東京都内で木工から塗装まですべてを自社工房で出来るまれなところなんだけど、すごくいい仕事をするんですよ。具体的にはボディ、ネック、ピックガード、すべてを一から作りました。

S : ...ってことは、中古のギブソンWネックを、このギブソン・ロゴの入ったヘッド・プレートと、フィンガー・ボードのパーツ取りのために、1本買ってつぶしたわけ?!

J : そういうことですね、それによってギブソン・リイシューWネックを基本に、モディファイしたってことになりますし、完全にオリジナルのギターに"Gibson"ってロゴは入れられないんで(笑)。でも、ペイジのSG-Wネックって、"Gibson"ロゴがついていればいいってわけじゃなく、ビジュアル的にもプレイングに関する部分でも、トリビュートする上でのチェックポイントが、たくさあるでしょう? 僕も、90年代に一度はギブソンのリイシューWネックを手にしたんですけど、それも含めていままでに出たリイシューが、僕のチェックポイントすべてを満たせたものがなくて。だったら納得いくギターを、材から選んで作る、というところに行き着いちゃったんだよね。

S: チェックポイントといっても、そこまで気がつく人はまれな部分っていうのもたくさんあるんだけど、普通に気づく範囲で言っても、ペイジのものは他のWネックと比べて特徴的な部分が多いですよね。見るだけでもすぐ気づくことと言えば、
*テールピースの位置がかなり後方にある。
*6弦側のPU(ピックアップ)カバーをはずしている。(注:初期は全部カバードのこともあり)
*12弦側のヘッドが長い。(12弦、6弦のヘッドの大きさのバランスがリイシューとは異なる)
*ピックアップ・セレクターが長くて白い。(リイシュー・モデルは長いが色は黒)
...ここまでは、写真や映像でも、かなりの人が視認できると思うんです。

J
: あと、ごく初期の頃は、ゴールドのスピード・ノブを使っていて、すぐに黒に変えた。いずれにせよスピード・ノブを使っているんだけど、プレイヤーの立場でいうと、ジミー・ペイジのようにプレイングでよくボリューム・ノブのコントロールを多用する人には、これはすごく重要なポイントです。スピード・ノブのほうが、リイシュー・モデルで採用されているトップハット型より、断然レスポンスが早いからね。
ここまでは普通に視認できる明かな違いかなぁ。でも、まだまだある。更に踏み込むと。

S : ここからは、上級編ですね(笑)。まずヘッドの角度。いままでのリイシューより、ペイジのものは角度があります。

J : そう。僕のは、フリーダムにレスポールのヘッド角度と同じ17度でオーダーしました。それと重要なのは、これはサウンドにも関係してくるけど、ネックのボディへの差し込み角度ですね。リイシュー・モデルではボディに対してほぼ平行だけど、ペイジ本人のものは、かなり角度がついている。この部分も、フリーダムとWネックを制作する過程でいろんな写真資料を探していて、73年のバックステージで横たわっているWネックの写真などではっきりわかったことです。そのほか可能な限りの資料から角度を計って、ほぼ同じように作ってもらいました。

S: この、ネックの差し込みに角度をつけることによるメリットって、何なんでしょう?
J:まずは弾きやすさ...。さっき話に出た、テールピースがかなり後方についていることによって、当然、距離が長くなるので弦のテンションが弱くなる。これを是正するためにネック角度をつけた...というか、ネック角度をつけるために、わざわざテールピースの位置を後ろにしたのではないか、とさえ思う。それによって、ジミー・ペイジにとって最適なテンションが得られたのでは。(注:角度がつくことにより弦のテンションは強くなる)

S : たしかに彼は、アコースティック・ギターを好み、エレクトリック・ギターに対しても指弾きを多用する人だから、その時にそのネック角度がもたらすテンションが、弾きやすいのかも知れませんね。

J : あとはネック角度がつくことで、PU(ピックアップ)のフロント/リアの高さ調節に、彼の好むレスポールと同等のセッティングが可能になるんですよ。僕が思うのは、このLP(レスポール)と同じPUセッティングを可能にしたいが為に、ネック角をきつめにオーダーしたんではないかと。(注:LPのPUはフロントが低くてリアが高い)

S : なるほど。で、それに伴って、おのずとテールピースも後ろになる...というわけですね!

J : そう。それが、ペイジがギブソンへオーダーする際に、SG-Wネックに対するリクエストのスタート・ポイントにあったんではないかと。「レスポールと同じPUバランスでWネックが弾きたい」という、プレイヤーとしての希望がね。

S : あと、ペグの始まる位置が、リイシューとペイジ使用のものとは、違いますよね。6弦側のヘッドと12弦側のヘッドの、1弦・6弦それぞれのペグの取り付け位置が、リイシューはすごくずれているけど、ペイジのはほぼ平行です。

J : 僕も、そこは制作の過程で、職人と一緒に非常に悩んだ点なんですよね。写真によっては、ずれても見える。でもこうして実物を見ると、やっぱりほぼ平行ですね。

S : サクライさんのペグは、いわゆる"ふたこぶクルーソンDeluxe"ですよね?

J : ペグはヴィンテージ・パーツを探してきて付けました。いままでのリイシューに付いてるのは、ひとこぶのクルーソン。

S : 細かい点ですが、ペグを留めている形状が、リイシュー・モデルはナット締め、サクライさんのもオリジナルもブッシュ式だから、リイシューよりペグの間隔の見え方が広くなる。これがさっきも話に出た、ヘッドの長さの見え方にも関係しているんじゃないでしょうか。

J : これは、よく見ないとわからないだろうなぁ〜(笑)


J : ...こうして僕のと相馬さんのヴィンテージ・ギブソンを並べてみると、まずパッと見ただけでカラーが違うんだけど、その他にもボディの形状、シェイプのディテイルが、やっぱり違いますね。

S : さっきもちょっと言ったんですが、これは日本でもトップのヴィンテージ・ショップで探してもらって、ショップオーナーの見立てでは「68年〜69年のあたりに作られたもの」と鑑定されました。この年代のヴィンテージWネックはイーグルスの使ってたホワイトのものとか、色々存在しますが、テールピースの距離はどれも短い。(注:こ のSG−Wネック=正式名ギブソンEDS-1275は、当時様々なスペックのモデルが存在していた)
ただ、これが珍しいのはファクトリーオリジナルの状態で、チェリーレッドのカラーで、テールピースが後ろに付いているということです。で、僕の仮説としては、さっきのサクライさんの話からも推測して、これが<ペイジがギブソンにオーダーする前の、ギブソンEDS-1275のオリジナルな形のひとつ>だったのではないかと。果たして、試作だったのか、だれかの特注で作ったものだったのか...。

J : 相馬さんのWネック、ボディのシェイプとディテイルは、ペイジのものに完璧に近いですよね。

S : そうですね。でも、ネックの差し込み角度が違うんです。角度はついているが、浅い。だからさっきサクライさんが言ったようなブリッジを上げるという処置が出来ない。つまり、LPに近いPUのセッティングには、できないんです。

J : そうすると、弾き心地としては、ピックと指を併用したプレイングをするには、しづらいですね。

S : そうなんです。頑張ってるんだけど、テンションが柔らかめなので指が引っ掛かりやすいんです。
一説では、SG−Wネックが作られたのはジミー・ペイジのオーダーが初めと言われているけど、ペイジのオーダー前にこれがあったのは、当時のギブソンのカタログからも事実。で、これを見たジミー・ペイジが、「もっと弦のテンションを稼ぎたい」と思って、ギブソンはそのオーダーに応えてネックの差し込み角度をつけたのでは...。

J : 当時、ジミー・ペイジがギブソンに5本オーダーしたって説がありますよね。

S : いや、「4本ペイジに出荷した」って話も(笑)

J : ひょっとしたら、それがすべてスペックが違っていて...

S : いちばん弾き心地とルックスがベストなものを、ジミー・ペイジが選んだ?

J : 聞いた話では、LED ZEPPELIN解散時にロバート・プラントがオークションでWネックを1本を売ったらしいですよね。

S : ..っていうことは、そのうちの1本をペイジがプラントにあげたのかな。

J : プラントがWネック弾いてる写真、見ますよね、広島公演のリハーサル時と思われるショットとか。あれはプラント本人のではなくて、ペイジのものだと思うけど。

S : あの写真は、すべてピックアップがカバードですよね、で、スピード・ノブはゴールド。
ピックアップについては、サクライさんのWネックは6弦も12弦も当然、MR.JIMMYピックアップ(※3)でしょ?

J : もちろんそうです。GRINNING DOGの岸本さんと一緒にあれこれ試行錯誤して、「これだ!」というのができた瞬間「持ってるやつ全部替えてください!」ってオーダーしたから(笑)。相馬さんのWネックは、ギブソンのオリジナル?

S : もともとの状態では、4個ともオリジナルのヴィンテージPAFが付いていました。このピックアップだけで市場価格が1個ん十万ですよね?(苦笑)でも、それでは僕の欲しいジミーペイジの音が出なかったから、ショップに引き取ってもらって、桜井さん&岸本さんが開発したピックアップに替えました、4個とも。

J : それは...、ショップの方も驚いたでしょうねぇ、「ヴィンテージのPAFはずして別の付ける」なんて(笑)

S : 僕にとっては、これは大正解でした。サクライさんもそうでしょうが、僕が欲しかった音はヴィンテージ・パフの音じゃなくて<ジミー・ペイジの音>だったから。

J : 僕もビンテージ・レスポール入手してすぐ「ペグを替えたいんですけど」って言ったら、お店の人が倒れた(笑)。ピックアップも当然、MR.JIMMYピックアップ付けるとき外しちゃったし。結局、このWネックにしても、こうして同じ時代の同型にいろんなスペックが存在するということから考えても、「フル・オリジナルである」ことが良いというのは、プレイヤーの立場からすると、ちょっと違うんですよね。

:その辺りは、やっぱりいわゆるビンテージ・コレクターの方の価値観と、プレイヤーは違うんでしょうね。

:あと、相馬さんのSG-Wネックは、ペイジ所有モデルとネック周りに決定的違いがありますね。ネックのジョイントの位置が、ジミー・ペイジのものより1フレット外なんですよね。だから外見上、ちょっと相馬さんの方がネックが長く見える。したがってフロント・ピックアップの取り付け位置が変わってくるから、リア・ピックアップとの間が、開いて見える。まぁ、言われないとわからないと思うけど。

S : そうなんです。あとはですね、もっと細かいと、ピックガードの取り付けネジの位置とか...(笑)。
更にはヘッドのトラスロッド・カバーに『CUSTOM』の 刻印が入ってる、とか!

J : もう音にもプレイングにも関係ない域にいきましたね(笑)
それにしても、僕が高校生の頃、グレコのWネックが発売されて、これでそっくりだと思った。で、買うしかない!と(笑)。今見たら全然違うんだけど、その後90年代にギブソンのリイシューを買うまで、ずっと使ってましたよ。

S : 僕はBURNYでした!12弦のヘッドはグレコより短かったけど、確か、PUセレクターが例の"長くて白"だったんですよ!

J : BURNYは、コントロール系統が逆だったんですよねー。

S : あ、そうでしたっけ?(笑)懐かしいなぁ。
今年出るギブソンのSG−Wネックは、なんと言ってもペイジ・シグネイチャーですからね。今日話したようなポイントに、いったいどれだけ近づいてくれるか、楽しみですね。

J : 僕は、とあるウェブサイトでその試作(?)を見たんだけど、テールピースが後ろに付いていることと、6弦側のピックアップ・カバーがはずれている点だけは、確認できた。ただプロトタイプの状態ではまだ、コメントは控えたいな。日本で実物を見られるのはまだまだ先だろうけど、ぜひその時には今日の続きってことで、じっくりチェックしたいですねぇ。

S : それは、ぜひ!

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※1:PERFORMER
米国TRANS PERFORMANCE社から発売された画期的なオート・チューニング・システム。スイッチ操作であらゆるチューニングに瞬時に切り替わる全く新しいギター組込型ユニットで、ジミー・ペイジはこのシステムを搭載したレスポールを3本所有し、カヴァーデイル・ペイジの活動からずっと使用している。JimmySAKURAI使用モデルはこのサイトの equipments に掲載。

※2:フリーダム
有限会社フリーダム カスタムギターリサーチ(Freedom Custom Guitar Research)
URL: http://www.freedomcgr.com/

※3:MR.JIMMYピックアップ
ギター・カスタマイズ工房GRINNING DOG Studio岸本氏とJimmySAKURAIが共同開発した"ジミー・ペイジサウンド再現"のための特製ピックアップ。すべて岸本氏のハンドメイドによって制作されている。
グリニングドッグ工房URL:  http://park6.wakwak.com/ ̄grinningdog/

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