TEA FOR ONE TOP

第一回・・・TEA FOR ONEマスター河野氏と






原宿の閑静な住宅街にあるカフェ&バー【Day's】は、プライベートな雰囲気の中でRock映像とオイシイお酒&料理を楽しめるスポット。




「原宿でゆっくりするなんて5年ぶりだなぁ」とTEA FOR ONEマスター河野氏。
原宿といえばかつてZEPショップのあった街、MR.JIMMYも、1999年にはZEPショップ主催のイベントでプレイしたこともあり、その時はじめて観て下さったお客様が、いまだにライヴに足を運んでくださいます。




隠れ家のような心地良い空間【Day's】で、マスターとJimmy SAKURAIがツェッペリン新着映像とお料理を肴に、紅茶ならぬ美味しいお酒で、久々に語り合いました!



Cafe& Bar [Days]
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-5-16
03-5410-6841






 


に掛かるLPジャケットを見るなり「お!これ、ワーナー盤の1stのオリジナルじゃないっすか!」と河野さん。さすが!
まずは原宿ロックンロール・ミュージアム、ZEPショップ時代の話から。

(J:Jimmy SAKURAI/K:マスター河野)



J : ZEPショップでは、何が一番売れてたんですか?

K : ナニが売れたといったら、やっぱりTシャツ。それと古いレコードとか・・・。

J: アーティスト・グッズとか?

K : いやぁ、ZEPのメモラビリア(いわゆるアーティスト・グッズのこと)はあまり種類がないんです。ビートルズやストーンズに比べると。

J : へぇー。そういうところに、主眼を置いていないってことかな...。ビートルズショップに行くと、”イエロー・サブマリン”てロゴの三輪車まで売ってたりするじゃない(笑)

K : ビートルズやKISSとは、その点かなり違うんですよ。
『狂熱のライヴ』でもピーター・グラントが、Tシャツとか無断で売ってたやつにすっごい怒ってるシーンあるでしょ。ああいうところへの規制もすごかったしね。

J : ヘルコのピック(※注1)も置いてたよね。あれは売れたの?

K :  あれも売れましたよ(笑)あの柔らかいピックね..それこそ、ギター弾かない人でも、「あぁこれがジミーの使っていたピックだ」ってことで、持ってるだけでうれしいみたいなとこありますよね。他にもテルミンとか、楽器系も売れました。他には・・・やっぱりツェッペリンは、ブートだなぁ。もともとZEPのブートって単価が高いんですけど、長いから(笑)。でも、タランチュラってレーベルあったじゃないですか。あれに代表されるように”ZEP=ブート”っていうのは、ぬぐえないんですよね。なんでかというと、(ツェッペリン自身が)音源出してないから。だってあの当時って、『狂熱のライヴ』の映画館での隠し撮りとかしかなくて。ビデオで市販されるようになっても14,800円もしてオレ、買いましたもん。いまでこそDVDが出てるけど、それまでツェッペリンは音源が出てこなかったから、ブートのニーズは、すごくあった。

J : ブートレッグも含めて、仕入れルートの開拓とかも河野さんがやってたの?

K : やってましたよ、全部。仕入れ、値段付け、全部。

J : すごいなぁ。

K : まぁ、あの会社で他に分かる人、いませんでしたからね(笑)。たまたま私がツェッペリン好きだっていうんで、一度閉めたヤードバーズのお店を再度開けることになったわけで...。

J : ヤードバーズのお店があったんだ?!

K : ありましたよ、【ヤードバーズ】っていうお店があって、それがZEPショップの前身なんですけどね。”3大ギタリスト”に焦点を当てて、ペイジ・ ベック・クラプトンの3人が在籍したバンドっていう意味でプレミアつけてやってたんです。

J : へぇ〜...。それは知らなかったなぁ。




K : トリビュートってことで言うと、どこまでそのバンドをエンターテイメントとして表現できるかということに加えて、そのバンド自体がどれだけ一般に認知されているか、ということだと思うんだけど、たとえばビートルズっていうのは、世界中の認知を得ているじゃないですか。あとメディアに登場するという点では、ローリング・ストーンズ。いまだに来日すると『目覚ましテレビ』に取りあげられちゃう(笑)。それでさらに新しい認知を得る。その点、レッド・ツェッペリンは現在、ツライですよねー。レコードでいったら、ツェッペリンのほうがストーンズよりレコード売ってるんですよ?!ビートルズの次に全世界でレコード売ってるのに・・・。

J : それは、60歳過ぎていまだ現役でやっていることとか、そういうメディア向きの話題性もあるんだろうけど、でも現役ということなら、エアロスミスが 来日しても、そういう取り上げられ方はしないよね。でも、KISSだと・・・

K : ・・・出るんだよね〜(笑)。やっぱり、エンターテイメントってことだと思いますよ。いわゆるバンドとして見ると、"音楽"では、レッド・ツェッペリンは"華"があるんですよ。でもメディア的なエンターテイメント、という点では華がないんですよ、"聴かせる音楽"なんで。だってね、いまだに「ツェッペリンて難しい」って言う人が、いるんですからね、「理解できない音楽だ」って。俺は「なんでだよ?!これもただのロックンロールじゃないか!」って思うんだけど・・・

J : いや実はオレも、中学生の頃は、「理解できない!」って思った。なんかものすごく、高尚な音楽というイメージだったなぁ。

ーー そのころの理解で普通にロックっていうのは?

J : やっぱりKISSとか、ベィ・シティ・ローラーズとか、わかりやすかったもんね。

K : 確かに、それらに比べれば曲が長いとか、難しいといわれるのも分からなくはないんだけど、僕は最近、「レッド・ツェッペリンて、すごく普通にロック ンロールやってるよなぁ」と思うんですよ。

J : うんうん、基本は、そうだよね。

K : それなのになんか、変に「ZEPPELINは高尚なもの」というイメージが、作られちゃってるんじゃないのかなぁ〜・・。

ーー それを作ってるのは、だれなんですか?

K : やっぱりメディアだろうねぇ・・・取り上げられないから、大衆化しない。だって、ビートルズの次にレコード売ってるのに大衆化しないって、それはメディアに出ないからで。...で、それを画策したのが、ピーター・グラントなんだよね。

J : テレビ出演をしないとか、ライブ映像を出さないとか。

K : そう、音だけでしょ。だから・・・ツェッペリン自身が、イメージを高尚で難しいものしちゃったのかなぁ。




K : 僕ね、中学の頃に放送委員だったんですよ(笑)。で、給食の時にDJやるんですよね。

J : (笑)うんうんそれで?

K : あの当時、ロック流行ってるっていっても一部の友達だったけど、いろいろリクエストがあるわけですよ。KISSとか、ヴァン・ヘイレンとか。で、俺はそういうのをすべて無視して、『アキレス最後の戦い』をかけたんですよ。これだーっっっ!って。
(一同爆笑)

K : それで、すっごい不評で(笑)。なんだあの長げ〜曲は!とか。退屈だ!とか。まぁ今思うと、確かに中学生じゃねぇ・・・

ーー それって、給食食べてる時間でしょ?!(笑)

J : あのさ、昔の中学生・・・昔って、俺たちの世代よりさらに前だけど、違うのよ。たぶん。もっと早熟だったんだと思うわけ。ツェッペリンのライブ盤聴いてると、70年のロサンゼルス・フォーラムで、プラントが ”Good evening!"て言うと、それに返して子供が"Good e~vening!"て言ってるわけよ(笑)。...たぶん彼らの耳では、聴けたんだよね。俺が中学生で理解できなかったことを、彼らはやっている。それはネブワースのジミー・ペイジ見ても思うんだけど。まだ34,5なのに、ゼッタイ俺より老けてると思うもん(笑)。もう、歳のとり方というか、成長の仕方が、あの時代の人たちは違うんだよね。

K : 60〜70年代って・・・もう、すごい時代だったじゃないですか。多くのアーティストが、いろんな原因で死んじゃうくらいメチャクチャなことしていて・・・。でもそれが“カリスマ”を生んで、とんでもない魅力を持つ事実もあって。80年代以降は、完璧に管理や計算がされている分、そういう面白さは、やっぱりないと思う。だからこそいまの若い子達にとっても、あの時代のものがすごい魅力的に映るんだと思うんです。いまの若い子達って、ツェッペリンを現代の音楽と同列に聴いているんだよね。僕らはどうしても、「ツェッペリンがあって、そのあとに○○があって・・・」という風に、タテに考えてしまうのだけど。

ーー TEA FOR ONEに登録してくださる方にも最近10代の方が増えてるんですけど、好きなアルバムに『How The West Was Won』て書いてあって新鮮に驚きました(笑)

K : あ、俺すごくわかる!だってあれは、格好いいよ。音もいいもん(笑)

〜大画面の映像はいつしか’75Earls Courtのブートレッグに・・・

J : ・・・この頃は、さっきの話じゃないけど、ペイジもかなりヤク中が進んでいて、はっきり言って、プレイング見ていると、ギタープレイにおける進歩は、ないのよ。止まっている。73年が俺が思うに、ジミー・ペイジのピークで、75年から77年と、下降線をたどっている。でもギタープレイでいうと...ある意味でのピークは、71年なんだよね。それで、つまりアルバムでいうところの4枚目が、ちょうど真ん中にあるわけ。そこから5枚目で、全く違う音楽性に変わっていって、ペイジのプレイング自体も、72年からがらりと変わる。その「変わってからのピーク」が、73年なんだよね。そのあとはもうペイジは、ギターをプレイするっていう意味では、いわゆるミュージシャンシップで言うところのプレイングではなくなっているんだよね。

K : もっとエンターテイメントとして追求してるっていうか・・

J : そう、エンターテイメントね。

K : 73年ていうのは、非常に完成されたプレイじゃないですか。
でも、一番ギタープレイとしておもしろいのは71年だと思う。

J : ギター・プレイングとしてはね。
ただ、楽曲としてどうか、レッド・ツェッペリンとは何ぞや、ということになると、僕らの世代は5枚目以降から後期の曲というのを、リアルタイムに聴いているわけ。ギタリストとしてプレイすると、その時代は明らかに下降線をたどっているんだけれども。僕らの世代は、『聖なる館』とか『フィジカルグラフィティ』を聴いて「すげぇ!こいつらのファーストって、どんなんだろう?」って、1枚目を聴いてるわけ。でも71年の来日公演を見た世代の方達は、圧倒的に3枚目までを支持されるよね。だからツェッペリンを演るうえでも語るうえでも、僕らは常に、そういういろいろな視点があることを意識しないといけないんだよね。

K : じゃぁ、ここで聞きますけど、JimmySAKURAIにとってのツェッペリン・ベストアルバムって、どれ?

J : やっぱり、『Houses Of The Holy』。
これが一番初めに買ったアルバムであって、この1曲目の『The Song Remains The Same』のギター・オーケストレーションに、もの凄い影響を受けたわけ。

K : じゃ、ベストライヴというのは?

J : ベストライヴは、これはとても難しいのだけど、やっぱりひとつの全体として、作品として良いと思うのは『狂熱のライヴ』だよね。ツェッペリン自身は、「これは良い演奏をしていない」って言うけれど、それはねぇ〜...ホントのこと言ってない。実はすっごく良くできた演奏なの。あの日の 『Stairway To Heaven』もそうなんだけど、完成されきってるし。

K : あぁ、あれはいいよねぇ〜〜

J : 『The Song Remains The Same』のソロにしても、あれはもう。

K : カッコイイねぇ〜〜〜!

J: あれを凌げるソロとってる演奏は、ないよ、うん。

K : あのね、ZEPショップをやってるとき、毎日もう一日中、ZEPの曲を流しているわけですよ、初期から後期まで、ブートからオフィシャルまで、毎日。それで僕が、一番衝撃を受けたのがね.....『BBCセッションズ』なんですよ。

J : あぁ俺もあれは、高校1年か2年から聴いてるけど、いいよね!!

K : 僕ももちろんブートは聴いたことはあったんだけど、自分が聴き始めた中学生の頃っていうのは、やっぱりアキレスとか、あっちに感化されてたから、 ブートレッグも77年とかが中心だったんだよね。

J : 71年のBBCっていうのは、俺も全く同感で、73年とは、別物なのよ。Paris Theaterって、BBCの主催だからお客がほんっとに静かで、1曲終わるごとにパチパチパチ・・・って。その静寂の中で一曲ずつあのヘヴィなのを 演っていくのが・・・

K : 俺ねぇ、69〜71年、あの頃の演奏って、もうパンクを連想するのよ。あの勢い、ロックってこうだ!みたいな・・・若さっていうか、パンクのような エネルギーを感じる。

J : 『Dazed And Confused』なんか、凄いしね。オレが常々言ってるのは、『天国への階段』のベストは、BBCだと。あれを超えるテイクはないと思う。オリジナルの『天国への階段』の素晴らしさに感動した人が、同じくらい感動できるような、通ずるものがあると思う。73年の『狂熱のライヴ』も素晴らしいし、77 年の『Listen To This Eddie』も良いとは言われているけど・・・

K : 『Listen To This Eddie』、あれは「ブートの音がよい」という意味での名盤であって、プレイヤーとしてベストなワケじゃないよね、必ずしも、"演奏"が良いわけではない。

J : そう。ブートレッグの名盤と言われているもので「素晴らしい演奏!」という宣伝文句のものがあるけど、中には、ただ単に他の日と違う珍しいことやってるっだけだったりするのもあるわけ。プレイヤーとしてオレが聴くと、「どこが?」みたいな(笑)。

K : それはすごくわかる。

J : もし揃えることで満足して、本質にある「その日の演奏の素晴らしさ」とか、その時のプレイの意味とかまで深く聴きこまないとしたら、残念だよね。

K : 僕はそういう意味で・・・実は、あのZEPショップでブートレッグを売ることに、すごく抵抗があったんですよ。

ーー それは意外ですね。いったいどういう意味で?

K : 僕は、ブートレッグを集めたりするより、「純粋にレッド・ツェッペリンという音楽を聴いて、楽しんでほしい」という思いが強くあったんですよ。だから、別にスタジオ盤でも、いいんですよ。ライヴなら、ブートレッグ買う前に、『狂熱のライヴ』を聴きこみなさい!って思う。

J : それは、まさにそうだね!

K : それからブートレッグ買うなら、オレは71年のこれかな、っていう勧め方をしていた。なんか「あ、コレ持ってないから全部集める」みたいな買い方されるともう、辛くなっちゃう(笑)。

J : オレもさ、「ジミーさんのことだから、ブートレッグたくさん持ってらっしゃるんでしょうね〜」とか言われるけど、実はそんなでもないわけ。各年代数枚ずつ、しかもほとんど、音の良いものやギタープレイの参考になるものしか持ってない。僕の場合は、所有する喜びの前に、聴いてトリビュートするという命題があるから、その視点で言ったら、今持っている数枚についてさえ、まだ完全には聴き込めていないと思ってる。聴けば聴くほど深いしね、新しい発見が あったり。なのにその上「まだこんなのもありますよ」と出されても、とても消化しきれないって感じかな・・・。

K : あれだけかなりの数のライヴを、やっているわけだしね。それを全部調べ上げるただの学者みたいになったって、つまらないよね。

J : あのね、TEA FOR ONEに登録してくださる方や、BBSでも、「あまりツェッペリンのこと詳しくなくて・・・こんな質問スミマセン」なんて方がいらっしゃるんだけど、もう、そんなこと、ぜーんぜん関係なくて。

K : そうそう、それを質問しづらいような雰囲気を作り上げたら、ぜったいダメだと思うし...この輪をそういう場にはしたくないし。むしろどんどん、そういう質問をしてほしいよね!

・・・お察しの通り、まだまだ二人の語らいは続きましたが、第1回の対談はこのへんでおひらきです。MR.JIMMYライヴにも足を運んでくださるDAY'Sママさん、おいしいお料理と楽しい時間をありがとうございました!

(注1:ジミー・ペイジの使用していた薄いプラスチック製ピックの復刻版)

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